2010.02.09
「ローカルに根ざさないと愛されない」――ファミリーマート・井上常務
日本のコンビニエンスストア業界において、他社に先駆けていち早く海外に目を向けていたのがファミリーマートだ。1988年の台湾進出に始まり、韓国、タイ、中国、米国、ベトナムと出店地域を拡大している。2009年8月には日本発祥のコンビニとして初めて海外店舗数が国内店舗数を上回り、昨年末時点で7950店舗を超えた。
ここまでの事業規模に育った背景には、いたずらに店舗を拡大するのではなく、1店舗ごとの地道な積み重ねがあってこそだ。同社の海外戦略を指揮する常務取締役 常務執行役員の井上史郎氏に海外で成功するための勘所を聞いた。
●リテールならではの難しさ
――ファミリーマートは、日本のコンビニエンスストアの中でも積極的にグローバル展開を推し進める戦略をとっています。
井上 これからの企業の成長を考えたときに、日本国内だけでビジネスをやり続けるのではなく、海外、特に経済成長や人口増加が著しいアジアに出て行くことが不可欠です。一方、国内では、今後人口が減少する中で効率的な利益中心の経営が求められます。異業種に参入してビジネスを拡大するという方法もありますが、ファミリーマートは海外に目を向けた成長路線を主軸に考えています。
海外でビジネスをする上で、リテール(一般消費者向けの小売)ならではの難しさもあります。その1つが貨幣価値の違いです。例えば、日本ではコーラの値段が100円以上しますが、ベトナムでは30円程度です。商品の製造方法や流通構造、人件費なども日本とは異なるので、30円で同じものが提供できるわけですが、単純に売り上げ数字だけで見ると3分の1になってしまいます。
海外でリテール事業を展開しても、日本の基準で考えると利益が少ないではないかという意見は少なくありません。しかし、その国や地域にとって当社がどれだけ貢献しているか、役割を果たしているかという視点で見れば、十分に価値がありますし、決して数字だけで比べるものではありません。これがグローバルビジネスの考え方なのです。
また、コンビニはインフラビジネスなので、ある程度規模が大きくならなければ急激な成長は見込めません。経験からいうと、軌道に乗るには10年ほどがかかります。1店舗あたりの坪数、客単価は小さいので、1つ1つ地道に積み重ねていく必要があります。1つの投入で大きく利益を上げるというモデルではありません。当社でも台湾での事業はようやく軌道に乗ってきましたが、中国や米国ではいまだ先行投資の段階です。
店舗拡大は一朝一夕でできるものではなく時間がかかります。コンビニでは弁当やサンドイッチなど「中食」と呼ばれる鮮度食品を扱っているため、そのための生産工場を用意する必要があります。仮に店が地域に1つしかなく、そのために工場で1日に売れる30食分だけを作っていれば、とても採算が合いません。少なくとも50店舗ほどのチェーン展開をしない限りは工場のコストすらまかなえません。店舗が増えないとビジネスが成り立たない点がコンビニの難しさであり、スーパーマーケットや雑貨用品店、衣料品店とは違う点でしょう。その代わり、店舗が広がると売り上げが一気に急増します。実はこれが楽しみでもあります。
――これまで多くの日本企業が中国に進出しては失敗して帰ってきました。ファミリーマートでもそうした経験はありますか。
井上 もちろん閉鎖した店舗はあります。当社では新しい店作りはあくまで先行投資で、1年かけて収益を上げてから次の店を作るというのが戦略の構図です。ですから、仮に1年間で100店舗作ったとなると、一気に赤字店舗が100店できたことと同じわけです。ただし、先ほど述べたように数を増やさないと利益が伸びない構造ですので、規模の拡大と収益の追求のバランスをうまくとった事業運営が肝要なのです。
中国市場の難しさについては、外資規制も悩みの種です。以前、タバコの販売が突然禁止になったことがあります。中国のタバコ消費量は日本の数倍あるほど産業規模が大きいため、国内企業の優遇策が働いたわけです。ほかにも中国では突然規制が入ります。しかし、これは外資企業にとっては仕方ないことですし、それをどうやって次のビジネスで補填するかを考えることの方が重要です。
●コンビニはローカルなビジネス
――海外における日本のコンビニの強みとは何でしょうか。
井上 清潔で気の利いた店、そしてホスピタリティあふれる接客です。そうした日本の文化を現地のスタッフに教育しています。その一環として、「気軽にこころの豊かさ」というファミリーマートブランドの理念をお客さまに提案することを通じて、お客さまに選ばれるファミリーマートになるための当社のブランディング活動「らしさ推進活動プロジェクト」を海外の店舗でも展開し始めました。特に社員のホスピタリティ向上や、地元の小学生に店員を体験してもらうといった社会貢献活動などに力を入れています。
こうした活動を通じて感じるのは、日本も韓国も台湾も民度が同じだということです。ですから、CSR(企業の社会的責任)の重要性も海外では浸透してきています。
――日本で培ったノウハウやビジネスモデルは海外で横展開できるのでしょうか。
井上 基本的には現地に合ったものを作るべきです。そこに日本の良さや、ノウハウ、習慣を持ちこむのです。現地化しなければローカルの消費者には愛されませんし、現地に根付いたものを作らなければ定着しません。当社が販売するおでんを例にとっても、タイではトムヤンクン味だったり、中国だとカレー味だったりと、同じ商品なのに地域でまるで違います。
コンビニのビジネスはローカルなビジネスなのです。必ずしもインターナショナルマーケットではなく、地元の人に店舗を気に入ってもらい、商品を買ってもらわなければ成り立ちません。消費者から信頼を得て、現地で定着するには時間がかかります。
一方で、グローバルでサービスの統合も進めています。プロジェクトチームを立ち上げ、日本で開催するコンサートのチケットを海外の店舗端末で発券できたり、日本の「ファミマTポイント」を海外店舗で買い物したときにも加算、利用できたりする仕組み作りを検討しています。
――中国では時間通り正確に荷物を運べないなど、企業からはロジスティクスに関する悩みを聞きます。
井上 当社はまだ展開しているエリアが狭いので、大きな影響は出ていません。ただし、上海などでは交通規制により昼間は街中にトラックが入れないため、店舗への配送は1日に1回が限度です。日本では1日3便あるためロスが出ない仕組みになっていますが、1便だと発注数をコントロールするのが大変ですし、配送中にトラブルが起きれば取り返しがつきません。せめてもう1便増やせればと思っています。
こうしたロジスティクスを支えるのがシステムです。コンビニはまさにシステム産業と言えるでしょう。わたしは伊藤忠商事時代にIT部門を担当していたこともありますが、コンビニ業界のシステムのシビアさはほかの産業と比べて群を抜いています。システムが止まれば、物流がすべてストップし店舗に商品が届かなくなるのです。幸い、日本は高度な仕組みが出来上がっており、工場と物流会社と店舗の3者の役割が明確で、調和がとれています。【伏見学】
(ITmedia エグゼクティブ)
![sapone[サポネ]](http://kankyoucom.sapone.jp/wp-content/themes/sapone_02_g/images/logo.gif)





トラックバック URL
コメント & トラックバック
コメントとトラックバックはありません。
RSSフィード(コメント)
コメント