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2009.11.24

東京電力 「110万ボルト次世代送電線網」 国際標準化で世界普及に期待

出典:フジサンケイ ビジネスアイ

 今年5月、東京電力などの110万ボルト(1100キロボルト)超高電圧(UHV)送電線網技術が、国際電気標準会議(IEC)で国際標準として認められた。日本の技術が国際標準化機関の“お墨付き”を得て世界規格となる例は珍しく、技術の優位性が実証された。UHVは日本で現在運用している55万ボルト送電線に比べ約3~4倍の大量送電ができるほか、送電ルート(回線)削減や送電ロスの低減などでコスト削減や大幅な省エネも図れる。国際標準化によって世界に普及すれば、地球環境の保護にも貢献すると期待が高まっている。

 ◆欧米の壁…苦節30年

 UHVは将来の電力需要拡大を見込んで、送電網の効率化、送電ロスの低減などを図るため、1970年代から電力中央研究所などと共同で技術開発してきたが、約30年かけた開発と国際標準化の道のりは平坦(へいたん)ではなかった。

 メーンとなる送電線の開発を担当した電中研は78年から本格的な実験をスタートした。電圧を2倍にしても耐えられる電線の開発や鉄塔の小型化、周辺環境や落雷による影響などを調査。「85年までには実用化レベルに達した」(電中研)。その後、東電などが変圧器や遮断器など周辺機器の開発に乗り出し、90年代には実用化のめどをつけたという。

 一方で、不得意とされる国際標準化の道のりも遠かった。というのも、IECには77年に米国と旧ソ連が提案した1200キロボルトの送電線網が登録済みだったほか、97年にはイタリアの1050キロボルトも標準技術として認められた。この間、80年代から90年にかけて東電が提案した1100キロボルトは、米ソやイタリアの技術が実用化されていないにもかかわらず、「実績がない」などの理由で日の目をみなかった。国際標準化では欧米勢優位という厚い壁があったわけだが、標準化された2方式はその後いずれも頓挫し、残ったのは日本勢の技術だけ。東電は2006年には再挑戦を決めた。

 「メーカーや学識経験者も参加した“オールジャパン”体制を整え、関係各国を味方につける国際交渉術が決め手になった」

 東電の財満英一技術部長は、標準化にこぎつけた秘訣(ひけつ)をこう振り返る。まず、東芝、三菱電機など重電メーカーや学識経験者も巻き込んだ支援体制を立ち上げた。IECと並んで標準化作業に影響力のある「国際大電力システム会議」に変圧器や開閉器などのワーキンググループを立ち上げ、ここには日本から委員長を送り込み、地道に流れを作った。

 ◆中国への技術協力が転機

 転機となったのは、電力需要の急拡大が続く中国からのUHV技術協力の打診だった。東電と電中研は05年と07年に100万ボルト技術について、現地の送電網最大手「中国国家電網」とコンサルティング契約を結び技術を供与。今年1月には、山西省から湖北省までの640キロの実証試験で世界初の100万ボルト超の営業運転がスタート、日本以外での実績につながった。

 標準化には、投票権を持つメンバー国の3分の2以上の賛成票が必要になる。ネックは標準化交渉術にたけた欧州勢だ。このため、日本の支援チームは初のUHV営業運転を始めた中国をまず味方に引き入れ、さらにインドや、中国市場でビジネスチャンスをつかみたい欧州勢を巻き込む戦略をとった。この結果、25カ国中21カ国の賛成票を取り付け、晴れて国際標準として認められた。

 ただ、日本発の技術とはいえ、国内ではまだ実用化されていない。東電は需要拡大を見込み、99年までに430キロメートルにわたるUHV対応の送電線網を構築したが、実際には電力需要は頭打ちで、今でも55万ボルトで送電しているのが実情だ。今後の原子力発電所の立地次第だが、足元ではUHV化という機運はない。「新たな市場がなければ、技術の継承や高度化が進まない」(東電の岡本浩・系統技術グループマネージャー)という事情もある。

 そこで東電は、電力需要が旺盛な新興国向けなどをにらみ、12年までに変圧器や落雷から保護する避雷器など変電所の基幹技術の標準化も進める計画で、UHV技術のさらなる進化を目指している。(上原すみ子)

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